こんにちは歯科医師の大川です。
天候不順の中、お身体に変わりはありませんか?
私は風邪気味です。
さて、今回は大きな病気を患った年配の方のお話です。
主訴は口腔内からの出血で血が止まらないでした。
この患者さんは以前に治療をしていた方ですが、大きな病気もあり治療終了後、3年ほど経っています。
口腔内を拝見したところ、問診通り口の中が血だらけでした。
写真1は3年前の前歯の状態。
写真1
歯並びは乱れていますが、前歯はそれなりに並んでいます。
下の写真は今回来院された時の口腔内写真とレントゲン写真です。
前歯は非常に乱れ歯肉の腫脹もあります。パッと見た瞬間は、下の前歯が腫脹、ひどい発赤、歯の移動があり歯周病による歯肉の急性炎症かと思われましたが、出血は上顎の方から認められました。
上顎の総義歯を外すと、義歯の辺縁部に当たる粘膜が潰瘍になっており出血が見られました。
(写真はゆすいだ後に撮っています。)
かなりの深い潰瘍になっており、ずっと前から苦しんでいたのではないでしょうか?
この原因は下の前歯の異常な移動により、噛み合わせが変化したことで上顎総義歯の前歯の突き上げが起こり、義歯辺縁部が口腔粘膜に強く当たっていたことです。
義歯の調整、しばらくの義歯不使用、下顎前歯部の歯周治療(抜歯を含む)をお話しして帰られましたが、現在、病気もあり1回きりでお見えになっていない状態です。
今回のことで一人暮らしの方や身内の居ない方への対応の難しさを改めてを実感しました。
歯を保存していくために、残存歯のケアがとても大事と言うのはもっともですし、歯科医師だから歯を残すことが使命だとも思っていますが、もしコントロールできない状態が容易に想像できるならば、積極的に歯を抜去していくことが必要かもしれませんね。